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ピアノコラム piano column

 

[院内スクールの子供達]
群大病院の話

[院内スクールの
子供達]
群大病院の話

一時は退院したSさんがまた入院した。
この一年でもう3回目だ。
今度はより詳しい検査と治療のため、長期入院となりそうだ。
G大学附属病院の小児科には、そんな長期入院患者のため「院内スクール」がある。

Sさんは入院の度、キーボードを持って行く。
気分の良い時、ヘッドホーンをつけ弾いている。
ピアノはSさんの心を慰めてくれているのだ。
G大学附属病院の小児科入院病棟は、家族以外は入れず、面会は食堂だ。
「せんせェ・・・」Sさんが小走りで駆け寄って来た。
よかった!思ったより元気そうだった。
でも、ここではレッスンが出来ない。
「どうやって練習しているの?」と聞くと、看護師さんや、お医者さん達が来てくれる度、ベットテーブルに置かれているキーボードを弾いてくれると言う。
「A先生はね、エリーゼが上手なんだよ!」
「Y先生は、トルコ行進曲、看護師のIお姉さんはどらえもん!が弾けるんだ!
それにね、みんなでミッキーマウスマーチの連弾したよ!」
嬉しそうに話すSさん! ここが病院である事を忘れそうだ。
音楽好きのDr.がいてくれて良かった!
私が何度かお見舞いに行くと、ある日Dr.が私の所へやって来て、長期入院患者のために何かやってもらえないか・・・と言う。
私は、ひと時でも音楽の楽しさを味わってもらえれば、少しは元気が出てくるかもしれないと思い、その場でコンサートをやることにした。
院内スクールは入院病棟の一角にあり、3教室に分かれた小部屋に机がそれぞれ4台、ホワイトボードがあり、電子ピアノが置かれていた。
若い女教師が2人、まるで分校のように色々な学年の生徒の勉強を見ている。

集まってくれた子供達、包帯で全身をグルグル巻きにしている子、頭をすっぽり帽子の様なネットをかぶっている子、鼻からチューブが出ている子、両足が膝下から無い子等、皆痛々しい限りだ。後ろには看護師さん達が立っている。

私は、電子ピアノを中央に置き、ピアノを弾きながら、一人一人の名前を呼びかけた。
そして、小さなタンブリンを一人から一人へと渡し、それぞれの好きな物の名前を叩いてもらった。自分で出来ない子は看護師さんが代わりにタンブリンを叩いた。
全員まわったら、次はミニコンサート。
みんなの好きそうなデイズニーソングを弾き、アニメが加わると、自発的に歌声になった。
するとどうだろう、子供達の顔が痛々しい病人の顔では無く、どこにでもいる普通の子供の顔に戻っているではないか!
最後に小さなグループに分け、それぞれリズムを叩いて即興の合奏曲になった。
子供も大人もリズム打ちは真剣だ。
自ら楽器を弾くことは無くても音楽を楽しむ事が出来るのだ。
実感!
みんな楽しそうだった。

Sさん!あなただけではない、みんな、みんな病気になんか負けるな!
一緒に音楽やろうよ!


長廻かおる

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