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ピアノコラム piano column

 

[俺は男だ!女になんか謝らないぞ!]
5歳の男の子

5歳になったばかりのK君は声も大きく、いかにも元気な男の子だ。
2歳の弟といっしょにお母さんの運転するベンツでやってくる。
お母さんの話では、それまで東京に住んでいたのだが、ご主人の実家の歯科医院を継ぐことになり、ここ群馬県に引っ越してきたばかり。現在、歯科医院と家を新築中で、家が出来るまでお母さんは専業主婦をしているが、歯科医院が完成したら、自分も仕事を再開する予定とか。今はまだ知り合いもいなく、幼稚園でも孤立ぎみで・・・と言っていた。

K君は、リトミックを中心とする音楽基礎コースで、同じ5歳の女の子2人と一緒にレッスンをすることになった。
レッスンが始まると、K君は誰よりも早く太鼓をたたき、誰よりも早く鈴をならし、誰よりも早く、誰よりも大きな声で歌をうたった。
そして、時折、ちらっと、膝に抱かれてレッスンを見ている2歳の弟をみる。(お母さんではない!)
不思議なことに、ほかの2人の女の子には全然興味を示さないのだ。
お母さんの方は、他のお母さん同士とそれなりの挨拶はするが、取り立てて親しくなろうという様子は見られない。
レッスンもそろそろ慣れてきたころだ。
                          
事件が起きた!

いつものように、歌をうたい、それに合わせて太鼓をたたこうと楽器を出した所、いつも一番最後に楽器を取りに来るおとなしくて体の小さなNちゃんが、私の所まで全力疾走でかけて来て、太鼓をつかんだのだ!
いつも一番最後だったNちゃんが!
その時だった。
突然K君がNちゃんの太鼓をひったくるように、取り上げたのだ!
びっくりして泣き出すNちゃん。
「これはオレのだ!おまえなんかにわたさないぞ!」
「K君、太鼓はみんなで順番に使おうよ。いつもK君が先だったけど、今日はNちゃんからね。」
そう言って、間に入った先生の制止などおかまいなしで、手にした太鼓をどんどんどんどん!!!と叩き続けるK君。
今度は、もう一人の女の子が、太鼓を取り返そうと手を伸ばした。

その時だ。
K君は彼女を突き飛ばしたのだ!
二人の女の子と、騒ぎに驚いた弟の三人の大泣きの中一人K君だけがへいきな顔をして、太鼓を叩きつづけている。
大抵こういう場合、お母さんが子供をたしなめるのが普通なのだが・・・
見るとK君のお母さんは取り立て困った風でもなく、顔色ひとつ変えず、我が子の様子をただ傍観しているだけだ。

「K君、乱暴はだめだよ。楽器はみんなで順番だからね。突き飛ばしちゃった二人のお友達に謝ろうね。ごめんなさいって言えるよね。」
そう言って、K君の太鼓を取り上げようとすると、K君は太鼓を床に投げつけ、大きな声で言った。

「あやまらないぞ!オレは男だ!女になんかあやまらないぞ!女に頭を下げるなんて男のすることじゃない!」

そう言って、両手にこぶしを作り、女の子たちに殴りかかってきたのだった。
オレは男だ? 女のくせに? 頭を下げる? 5歳の子供が使う言葉?
思わずお母さんを見ると、やはり傍観している。
「いやあね。K君たら、そんな言葉どこで覚えたの?テレビ?」
そう言って、「ごめんなさいは魔法の言葉。なかよしになれる魔法の言葉!」
と言い、傍観しているK君のお母さんには、「お母さんと一緒にごめんなさいをいおうね。」と声をかけた。

何とかその場を収めたのだが・・・
もしかして・・・K君の家では・・・心配だ。

がんばれ! K君のお母さん!


長廻かおる

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