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ピアノコラム piano column

 

[コンクールの功罪-4]

毎日3~4時間もピアノの練習をしているHちゃんの夢は、ピアニストだ。
小学4年生でも随分と難しい曲を弾いている。今まで3つのコンクールで1位をもらった。
地方のコンクールから全国レベルにと目標を上げた。PTNA地区予選は毎回通過している。
次の目標は本選入賞だ。

コンクールと言っても色々なタイプがある。
自由曲だけなら、自分の好きな曲を弾く。
みんなが自分の得意とする曲なのだから、その分レベルにバラツキが出やすい。
課題曲があれば全員同じ曲を弾く。
審査員としては点数がつけ易いが、演奏者としては相対評価される中で個性を出す難しさがある。
学年によってクラスが分かれる場合が多いが、中には飛び級といって小学校低学年の子が中学生、高校生レベルのクラスで出場する場合もある。
審査員の講評がもらえる場合、数人の先生方の意見を聞く事ができるのは大変勉強になる。

沢山あるコンクールの中、どのコンクールを受けるか?
が大きな問題だ。
つまり、自分の得意とする曲でチャレンジするコンクールか、難しい課題に少し背伸びをして有名な審査員が採点する、ライバルの多いコンクールか。

私は誰でも彼でもコンクールを勧めたりはしない。
コンクールを受けた方が勉強になる場合と刺激を受けることによりモチベーションを上げた方が良い場合だけだ。
「どの程度通用するか?」などと子供を試すような事は絶対にしてはならない。

Hちゃんは今回、Sピアノコンクールにチャレンジする事になった。 既にコンクール入賞者であるHちゃんの意気込みはすごかった。 ピアノの先生をしているお母さんも真剣そのものだ。

予選、準本選、そしていよいよ本選へと順調に進んでいった。
そして本選当日。
Hちゃんの演奏は素晴らしかった。輝いていた!
誰よりも立派な演奏だ!
他の出場者より断トツで上手い!
これなら大丈夫、私は確信していた。

それなのに…落選!
信じられない結果だった。

入賞者達を見ると、どこか他のコンクールで入賞していた見覚えがある子ばかりだ。
私自身、コンクールの審査員として、毎年多くの生徒の演奏を聴いている。
この入賞者達とHちゃんの差はどこにあるのだろうか?
私の耳が、自分の生徒だからと身びいきにでもなったというのだろうか?
どう考えても納得がいかない。
僅差ならば、審査員の趣向も考えてトロフイーは貰えなくとも、奨励賞くらいは入るはず。
しかし、Hちゃんは断トツの素晴らしい演奏だ。
それなのに…

審査員の講評用紙が後日送られてきた。
どの講評用紙にもHちゃんの演奏が、大変素晴らしかったと書いてある。しかし、どこにも点数は記載されていない。

このような内容の良い評価を貰いながら入賞も奨励賞も貰えないなんて、どう考えてもおかしいではないか?

このコンクールを主催したS新聞には翌日結果が掲載されたが、ホームページには結果発表後4日も過ぎているのにまだ結果が掲載されていない。
不思議に思いS新聞社に問い合わせた所、たった一人しかいない担当者が会社を休んでいるためまだ掲載出来ませんとの返事だ。

これもまたおかしなことではないか!
自社の新聞社が主催のコンクールで、既に結果発表されたのに?HPに掲載出来ないとは!

後日聞いた話では、コンクール結果に疑問を持ったのは私一人ではなかったようで、多くのピアノ関係者から結果に対して異議申し立ての電話があり、担当者が対応しきれず会社を休んでしまったという。
何ともお粗末な話ではないか!

Hちゃんをはじめ、コンクール出場者の皆さん!
こんなことで!こんなことで!こんなことで、ピアノを嫌いにならないで下さい。

一生懸命練習してコンクールにチャレンジする皆さん、勉強になる良いコンクールは他に沢山ありますよ!


長廻かおる

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