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ピアノコラム piano column

 

[コンクールの功罪-3-②]

[コンクールの功罪
-3-②]

初めてのコンクールで出だしを弾き違えて上手く弾けなかったBちゃん。
ようやくお母さんに抱っこされたBちゃんは大泣きだ。
皆、声を失っていた。

私は「よく最後まで頑張ったね。立派だったよ。初めてのコンクールだもの、緊張しちゃったよね。最後の方はとても奇麗だったよ。お辞儀も立派だったし、素晴らしい演奏よ!」
と出来るだけ明るい声で大泣きのBちゃんに言った。

お姉ちゃんも泣いていた。
このような緊張の場所で演奏する事がいかに難しいか良くわかっているのだ。それに誰よりもBちゃんを応援していた。
演奏前は舞台袖までついて行って先輩らしくお辞儀の仕方のお手本を示した。悔しい気持ちが伝わってくる。
私も涙をこらえていた。

お父さんの大きな太くて低い声が響いた。
「先生、みっともない演奏ですみません。ぶざまな姿をお見せしました。」

「???」ぶざまな姿?
私は耳を疑った。 ぶざまな姿?みっともない演奏?
小学1年生で初めてのコンクールでとちってしまったBちゃんの事?

「お父さん、そんなことはありません!出始めにアクシデントはありましたが、最後までキチンと一生懸命やったではありませんか!
コンクールに来るまでに沢山練習しましたよ。良く頑張ったって褒めてあげて下さい!」
私は必死に訴えた。

「甘やかせないでください。結果がすべてですよ。」
お父さんの声は厳しく冷たく、周りの人々を圧倒した。

「結果がすべて…」私は茫然と立ち尽くした。

お母さんは何も言わないで、Bちゃんを抱きしめるだけだ。
お姉ちゃんはうつむいたまま泣いていた。


長廻かおる

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