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ピアノコラム piano column

 

[コンクールの功罪-3-①]

[コンクールの功罪
-3-①]

「せんせい、わたしもピアノコンクールうけたい…」小さな声でBちゃんは言った。

Bちゃんは小学校1年生になったばかりだ。幼稚園年中さんからピアノを習っている。
2歳違いのお姉ちゃんもピアノを習っていて、姉妹はとても仲良しだ。 お姉ちゃんはピアノが上手で、コンクールでも賞をもらっている。
Bちゃんはお姉ちゃんが授賞式でライトを浴び、みんなが口々に
「おめでとう!素晴らしいね。」 「よく頑張ったね。」
という賛辞の言葉を聞いた。
授賞式の後、お祝いのご馳走も一緒に食べた。
おまけに、遠くのおじいちゃんからお祝いにと素敵な携帯電話をプレゼントされた。
Bちゃんは、「わたしもほしい…」と言ったが、お父さんが
「お姉ちゃんは努力したから貰えたのだ。 Bはまだ何もできないだろう?」
そう言って、Bちゃんには何もプレゼントはなかった。

Bちゃんはお姉ちゃんのようになりたいと思った。
みんなから褒めてもらいたい!
ご褒美にプレゼントも欲しい!
私だって出来る!
それが「ピアノコンクール」に向いたのだ。

動機はともかく、せっかく本人がやる気になっているのだから「チャレンジさせてください!」お母さんからも声がかかった。

と言う訳で、コンクールの会場にいる。
他の子より一回り小柄なBちゃんは、よじ登るように椅子に座り、お姉ちゃんのお古の白雪姫のようなドレスを着てピアノに向かった。

「あっつ!!」思わずいきをのんだ。
始まりの音が1オクターブ高い!最初の場所を間違えたのだ。Bちゃんは慌てて弾き直しをした。
2,3回弾き直しをし、ようやくメロディーがつながった。
始めのミスは大きいが、その後は順調で丁寧な演奏だ。
最後の一音を弾き終わるとこわばった表情のBちゃんはそれでもキチンとお辞儀をした。

私は抱きしめて上げようとBちゃんを待っていたが、Bちゃんはなかなか戻ってこなかった。


長廻かおる

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