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ピアノコラム piano column

 

[コンクールの功罪-1]

「Aちゃん、ピアノコンクール受けてみる?」
Aちゃんはビックリしたようだったが、頬を赤くして、「やる!」と大きな声で元気よく答えた。
「コンクールは発表会とは違うよ。
発表会なら自分の得意な曲を弾くけど、コンクールは課題曲があれば何十人という人が同じ曲を弾いて、その中で何点というように自分の演奏に点数がつきます。大丈夫?」
先生の少し不安な声などおかまいなしにAちゃんは嬉しそうだった。

Aちゃんはそれほど熱心にピアノを練習してくる子ではない。
それどころか、毎日10分の練習の約束も守れない。
お母さんに、「練習しなさい!」と叱られながら、ようやくピアノの前に座る。
学校でお友達がピアノを囲み、順番に弾いたりする時は自分の番がきても「忘れちゃった」と言い、弾くことはない。1週間全くピアノを弾かない事もある。
そんなAちゃんに先生は「ピアノコンクール!」を勧めたのだ。

それからというもの、Aちゃんは変わった。
初めて自分からピアノの練習を始めたのだ。
先生に言われたように、朝学校に行く前に5分ピアノを弾いている。
帰宅するとランドセルを玄関に放り投げたまま、真っ先にピアノを弾いている。

「うちの子、どうしちゃったのかしら?」お母さんはビックリしている。
レッスン時間より30分も早くお稽古に来るようになった。
「Aちゃん、凄いじゃない!偉いよ!立派!」先生は褒めまくった。
レッスン内容は細かい所まで、何度も何度も出来るまで繰り返している。
Aちゃんの成長は想像以上だった。

コンクールの前日先生は「Aちゃん、本当によく頑張ったね。明日はいよいよ予選だけど、結果は気にしないって約束できる?頑張っても駄目なことだってあるからね。
先生はAちゃんがコンクールにチャレンジすると決めた時からAちゃんが凄い努力家になってくれた事が一番嬉しいよ。」と言った。

Aちゃんは、真っ直ぐ先生の顔を見て大きな声で言い切った。
「わたし、がんばるから!ダメでも大丈夫だから!」


長廻かおる

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