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ピアノコラム piano column

 

[どこ見ているの?]
爪を見ていたSちゃん

Sちゃんは4歳。大きな瞳、ぽっちゃりとしたほっぺが可愛らしい色白な女の子だ。
ピアノのレッスンを始め半年、ドレミが読め、ようやく両手演奏が出来るようになってきた。
そろそろ指を立てて弾くことを教えていかなくてはならない。

「Sちゃん!先生の手を見て! こんな風に手をまるくして、指が立つようにできるかな?」

私はSちゃんが良く見えるように、手をピアノの鍵盤の上に置き、お手本を示した。
Sちゃんは小さな手をまるめ、一生懸命先生のまねをしている。全ての勉強は『まねる』ことから始まるのだ。
「そうそう、じょうずね!」先生の褒め言葉がSちゃんのやる気を引き出す。
何とか、ピアニストの指が出来、ピアノの音が楽音に変わってきた。
「とても上手ね。音が美しく鳴ってきましたよ!」先生の声に、Sちゃんの嬉しそうな顔!
レッスンは穏やかに進んでいる。
次は音楽的なフレーズを教えて、曲をまとめていくが、どうしても1の指(親指)の音が大き過ぎる。
「Sちゃん、ここを見て!ここはフレーズの終わりだから、もう少し力を抜いて、小さく弾けるかな?」そう言って、楽譜を指差した。

どうしたことか、Sちゃんが体を小さく丸めている。
あ・・・小さく弾いてと言ったから、からだを小さくしたのだ。しまった!
「あのね、小さな音で弾くときでも、からだは小さくしなくても良いのよ!」
私は、姿勢がまっすぐになるようにSちゃんの背中に手をあてた。

おや?
Sちゃんの顔は楽譜に向いているのだが、その大きな瞳は楽譜とは関係ない方向に向いているようだ。
「? Sちゃん、どこ見ているの?」
Sちゃんの瞳は動かない。1点を見つめて動かない。
その瞳の先をたどってみると、何と!私の指の爪!
ここ!と言って、指差した音符ではなく、ここ!と言って、指差した指の爪を見ているではないか!
ここ!の場所が違う!
う~ん!小さい子の目線って! 
いつも子供の目線に立って考えているつもりだったが、、、いやはや、まだまだ。
あせらず、ゆっくり、一歩づつ、、、自分自身に言い聞かせる。

あなたの成長が楽しみ! Sちゃん!


長廻かおる

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