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ピアノコラム piano column

 

[雪!試験に遅刻]
遅刻したのは試験官

明日は卒業試験だと言うのに、天気予報は雪だ。
もしかしたら交通機関が乱れるかもしれない。試験に遅れるわけにはいかない。
交通機関に不安がある場合、前日のうちに会場付近に宿泊するよう手配するのだが、今回は前夜10時までレッスンがありそれも出来ない。
私の住でいる群馬県太田市から、昭和音楽大学まで電車を乗り継いで約3時間ほどだ。
朝4時代の始発電車で行けば、試験開始2時間前には着ける。
多少遅れが出ても2時間あれば大丈夫だろう・・・と考えた。
試験に遅れるわけにはいかない。

翌朝、始発電車の車中は冷たかった。
走り出しは順調だったが・・・音大まで、あと30分位と言う所で電車が止まってしまった。
10分20分・・・40分とうとう1時間たっても動かない。
心配が当たってしまった。

大丈夫・・・だろうか?時間がたつとだんだん心配になってきた。
始発電車に乗った私が遅れると言うことは、卒業試験を受ける学生も同じく遅れるだろうか・・・などと自分に都合の良いほうに考えていた。
いつもなら3時間で着く予定が結局は6時間かかり、ようやく音大に着いた。
よほど途中から引き返そうかとも考えたが、大切な卒業試験だ。大幅に遅刻したが試験会場に駆け込んだ。

公開演奏で行われる会場は凛とした空気に包まれ、外の雪など関係ない。
演奏がひと段落し、休憩時間に試験官の先生たちの所に行った。
いつもは大勢いらっしゃる先生がわずか数人しかいない。
聞けばほとんどが雪の影響で欠席したそうだ。
だが、卒業試験を受ける学生は誰一人欠けることなく、遅刻もなく、全員揃っていた。
彼らのほとんどが卒業後は先生となる。

試験に遅刻した私は採点する事は出来ないが、客席で全員の演奏を聴いた。
さすが…の内容の素晴らしい演奏だ。
「卒業おめでとう!君たちはもうプロの音楽家だ。」

夕方になっても交通機関の乱れは酷いものだ。
朝4時に出勤し帰宅は深夜2時。
身体はくたくたに疲れたが、彼らの真摯な演奏はずっと私の耳の奥で鳴り続けている。


長廻かおる

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