1. TOP
  2. レッスンについて
  3. ピアノコラム
  4. [現役歯科医で音大生]

ピアノコラム piano column

 

[現役歯科医で音大生]

音楽大学の入学式はオーケストラの演奏から始まる。
学長の祝辞、新入生の答辞、先輩学生のピアノや歌、サクソホーン、トランペット等のソロ演奏もあり、さすがに音楽大学!と思わせるような華やかな入学式だ。
その後、各楽器専攻に分かれて担当教員との個人レッスン時間の打ち合わせだ。
初対面の学生は一様に皆緊張感と期待感に溢れている。
私は自分の自己紹介をした後、好きな食べ物を言ってもらう。
フルート専攻の○です、ラーメン。ミユージカル専攻の○です、焼肉。音楽療法専攻の○です、苺。作曲専攻の○です、どらやき。声楽専攻の○です、キムチ…
音大には色々な専攻科があるが、皆必ずピアノをとらなければならない。必修科目だ。

その中に1人、大人びた新入生がいた。
浪人? 違った。

ナント、現役の歯科医師さんだ。
「どうして音大に?」と聞くと、子供の頃から音楽が大好きで高校生の時本気でオペラ歌手を目指したが、父親に強く歯科医師になることを勧められ、音大進学を断念したそうだ。
実際に歯科医師になったが、「歌いたい!」と、いつも心のどこかで音楽家をあきらめきれない自分がいた。
歯科医師になり数年働き、自分で学費を貯め30代になってからようやく音大生になった。
なかなかの情熱家ではないか!

授業が始まり、月~木曜日は音大生、金土曜日は歯科医師、彼女は誰よりも熱心だった。
4年間が過ぎ彼女は無事卒業した。

今、彼女は月~金曜日が歯科医師、土・日曜日には地域の合唱団の指導をしながら、小さなオペラ座で歌手として活躍している。
立派な2足のわらじを履いている。いや、今や3足のわらじだ。
音楽好きな同級生で歯科医師の彼と結婚して、主婦でもある。

この道一筋ではない素敵な生き方がここにある。
お幸せにね。


長廻かおる

Back to List

 
ページのトップへ戻る